coguma’s diary

主にパンと本と映画と…

何処に価値観を置くか

自分の町から出てパン屋さんに行くという趣味さえも躊躇してしまうコロナ渦中。

 

仕事も減り、外出も制限される生活で新しい本を読んで心を弾ませようとしていました。

でも、部屋の片付けで手に取った読み慣れた本を目にして読み返すと心が落ち着いて、『あぁ、心が疲れてたんだ』と実感するという出来事がありました。

 

私が好きで何回も読んでる本は吉田篤弘さんの『つむじ風食堂の夜』と『それからはスープのことばかり考えて暮らした』の2冊です。

 

どちらも素敵な〈町〉の中のお話です。

三部作らしいのですが、本屋さんでぽっと思い出しては探すけど、未だに見つけられていません。

 

この2つの物語の町はきっと同じ場所です。

出てくる町人(マチビトと読んでください)は皆それぞれにこだわりがあって、でも、他を認める懐の深さも持ち合わせているという共通点があります。と個人的に感じます。

 

最初に読んだのは『それからはスープのことばかり考えて暮した』でした。

主人公のオーリィくんは、読者から見ても心配になるほどの不安定さの持ち主(笑)(そしてボォーとしているけど我は強いと見ています)。

タイトルに出ているように、オーリィくんはある時からスープのことばかりを考えて暮らします。

だけど、映画も観に行くし(これもスープ作りに繋がっていく!)、家族に会ったり、お買い物をしたりと、普通(ではない時もある)の暮らしがあっての『そればかり』であるから話自体は穏やかに進んでいきます。

何より私のこの本の大好きポイントは、文章から想像する美味しい美味しいサンドウィッチ。

心と言葉が不器用なご主人が器用に作るサンドウィッチを、この本の中に入って食べてみたいと読む度に想います。

そして、出てくる人の各々なりの真っ直ぐさを感じさせる話し方が好きです。

 

これをきっかけに読んだのが『つむじ風食堂の夜』です。

こちらのほうが先に書かれた物語だそうです。

こちらは読み始めから街中華ならぬ、地元民に愛されている町洋食の場面。

この本をはじめて読むなら、冬の始まり頃がおすすめです。お料理の湯気を感じて温かくなります♪

ここの食堂に来る町人は個性が強めで、だけど、憎めなくて愛らしい人ばかり。

それにこちらは『それからは〜』のほうよりも町の中に不思議な香りがします。

ひとつばらしちゃうと、万歩計を〈二重空間移動装置〉と名付けて売る帽子屋さんがいたりします(笑)。

でもやっぱりみんな、各々なりの真っ直ぐさを持っていて好きです。

ずば抜け好きだなぁと思う文章があります。

夜遅くまで空いている八百屋さんの「果物屋一軒でもやってれば明るくて安心でしょ?」という所。その前に、ここの店主は店先で本を読んでいるのですが、売り物のオレンジを手元に置いて「こうすると電球の灯りがオレンジに反映するでしょ?本を読むのにちょうどいいぐあいの淡い光になるんです」と。ロマンチック!

どうして好きかというと、この利他と利己とのいい塩梅に、私もこんな風に暮らしたいとうっとりするからです。

 

 

タイトルと本文のここまで書いてきたことは繋がっていないと思われたでしょうか。

でも、この2冊を今の世情の中で読むと『何処に価値観を置くか』を改めて考えてしまいます。

大切にするべきことはなんだろうか。今やることはなにかな。現代人は幸せとか優しさ、生きるとか暮らすを誇張し過ぎているんじゃない?

などなど、頭が痛くなるほどではないけど、それこそオーリィくんの様にそんなことばかり考えています。

 

あぁお外で美味しいパンを、頬張りたい。

 

そんな今日この頃です。